「親が高齢に加えて認知症で、意思確認も難しい・・・」
先日、そのような状況で、不動産の売却ができるのかどうかご相談を受けました。
親族が、親などが所有の不動産を売却して、介護費用や生活費に充てたいというケースが増えてきているようです。
「売るだけだから簡単でしょ?」
そう思われるかもしれませんが、売買の取引では、高齢や認知症での判断能力が低い場合「売りますよ」という意思確認のところで問題が出てきてしまうんです。
契約が無効になる!?
売買(法律行為)をする時、自分の行為の結果が判断できる「意思能力」が必要になります。
宅建の試験でも出てきますが、苦手でした(>_<)・・・
高齢者等が、売却をする時(意思表示をした時)に、「意思能力」が無い場合、その法律行為は「無効」になります。(民法第3条の2)
本人の代わりに売買するには!?
本人に代わって、もしくは同意を得て、売買が無効にならないように、本人の意思能力を補完するのが「成年後見人」です。
①本人の意思能力が常に欠けている場合は「成年後見人」
②著しく不十分である場合は「保佐人」
③不十分である場合は「補助人」
この区別で「家庭裁判所」に申し立てて選任されます。
選任されると本人に「登記」がされますので、法務局で「登記事項証明書」を取得します。
(※選任がされてない旨は「登記されていないことの証明書」で確認できます。)
この取得は法定後見人か4親等内の親族に限られますので、該当する方が取得することになります。
法定後見人がいないと売却できない!?
それでは、法定後見人がいない場合で、売却できるかどうかの判断はどうしたらいいでしょうか?
この場合は、本人からの売却するという意思確認を慎重にする必要があります。
(※契約時はもちろん、所有権移転は司法書士が行います。詳しくは司法書士にご相談下さい。)
・なぜ売却するのか必要性や、その経緯
・不動産を取得した原因、居住年数など
・医師の診断書
・介護施設に入所しているのであれば、その期間
・入院や通院の期間
・家族、親族の氏名、所在 etc…
これらを総合的に確認して、もし、受け答えに矛盾や、不明瞭なところがあるような場合は注意が必要です。
その場合、医師や親族と相談しながら法定後見人をつける or 売却自体を見送らなければいけなくなります。
成年後見人制度以外に、「家族信託」という方法もあります。
家族信託で不動産を売却する場合には、信託契約書の内容に不動産の処分権限を持たせます。
しかし、契約行為は判断能力のない人は行うことができません。
つまり家族信託も「契約行為」になります。
認知症で判断能力を失った人=家族信託ができないということになるんですね。
2025年には5人に1人、20%が認知症になるという推計も出ているようです・・・
(出典:公益財団法人 日本ケアフィット共育機構)
「もう、歳だし任せるわ・・・」
高齢者が所有の不動産を、売却するかどうかの話の裏には、親族の意向が影響しているケースは多いでしょう。
売る方も買う方も、安全で安心できる取引をしたいものですよね。
もしも何も準備しないまま、所有者である親の認知症が悪化してしまう。
そうなると、実家などの不動産を売却することはとても難しくなります。
高齢者である親が対応できない場合には、この負担は全て子供にきます。
その結果、相続人である子供に迷惑をかけることにもなります。
そうならないよう、所有不動産の整理、そして売却する場合の対策を考えておくことが大切ですね。
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