静岡県熱海市で7月に発生した土石流災害。
災害の起点となった、土地の盛り土を適切に管理していなかった疑いがあるとして、静岡県警が、関係先で土地の前所有者にあたる不動産管理会社に、業務上過失致死容疑で家宅捜索に入りましたね・・・。
今後、立件できるのかどうか判断されるでしょう。
しかし、現地の当時の動画などを見て思ったのですが、あそこまで激しい土石流で、土地の姿が大きく変わってしまった場合に、いわゆる土地と土地との「境界」は、その後どう考えればいいのでしょうか・・・。
そもそも土地の境界とは!?
土地の「境界」とは ①公法上の境界 ②私法上の境界 に分かれます。
公法上の境界とは、例えば、それぞれ違うAとBの土地の間にある「境界」のことです。
この違う土地と土地の間の境界を「筆界」といい
「一つの土地が登記された時に、別な土地との境を構成する二つ以上の点と、その点を結ぶ直線」と定義されています。
一方、私法上の境界とは、誰に権利があるのか「所有権の境界」のことをいいます。
所有権と、先ほどの「筆界」が違う場合は、「筆界」が所有権の通りに「動く」のではなく、ひとつの土地の一部を分けて、その部分の権利を登記(所有権移転登記)することになります。
地盤が動く!?
そもそもの境界の考え方は分かりましたが、自然災害でその境界が分からなくなったり、無くなったらどうしたらいいのでしょうか・・・。
2021年11月1日現在、先週から震度4クラスの地震が国内で相次いでいます。
大地震が来ないといいですが・・不安ですよね。
縁起でもありませんが、仮に大地震が起きて、地盤が広い範囲で水平移動したとしたら、境界(筆界)はどうなると思いますか!?
実は水平移動した場合には、地盤面と一緒に「筆界」も相対的に移動したものとして扱われます。
がけ崩れや、土砂災害で境界が無くなった!?
それでは、熱海市で起こったような、がけ崩れや土石流、地滑りなどで土地形状が崩れ、隣地との境界が分からなくなってしまったらどうなるのでしょうか!?
この場合、局地的な地表面の土砂の移動の場合、原則として土地の筆界は移動しないものとして取り扱われます。
地表面の移動に当たって土地の形状が変化した場合
①従前の地積測量図と登記所備付の地図と、現況変更後の測量との比較
②所有者間での合理的な筆界の合意
③面積に変更が起こった場合の地積変更登記
などの、取り扱いをすることが示されています。
(※熱海市でこのような取扱いになるかは分かりません。一般的な取扱い事例の場合ですのでご注意下さい。)
噴火!土地が海没!?
火口から約2キロ以内の立ち入りが規制されましたが、阿蘇山が警戒レベル3に上がるのは2016年10月8日の爆発的噴火以来、5年ぶりだそうです。
(出典:朝日新聞デジタル)
世界の活火山の7%が日本と言われています、まさに火山の上にある国ですよね・・・。
仮に火山の大噴火、火山活動による海底地盤の変化で、新しい陸地ができたとします。
この場合は権利者がいない土地として国に帰属されます。
その後、土地の所有権を持った人が「表題登記」を申請して、「筆界」が設定されることになるそうです。
表題登記とは、例えば、いまだ登記されていない土地、海や河川を埋め立ててできた新しい土地、新たに払い下げられた国有地などを所有する場合など、「不動産の物理的状況」を公的に登録するもので、権利に関する登記の前提となるものです。
地震・水害・台風 etc・・・自然災害が世界でも、国内でも多発しています・・・。
火災保険も2022年10月より、自然災害の頻発を背景に保険料が上がります。
不動産の取引でも、重要事項説明では水防法に基づく「ハザードマップ」で水害等のリスクを説明する義務が追加されました。
今、災害のリスクは不動産=土地の、重要な要素となっています。
その中でも、違う土地と土地との間に線引きをする大切な「境界」。
地盤が動いて、境界が分からなくなる・・・その前に、そもそも所有している土地の境界ははっきりしていますか?
境界がはっきりせず、お隣さんとの境がなんだかもやもやしていたり。
塀の建て替えやなどの外構工事をしたいが、なんだか億劫になってしまったり。
お互い自分のものでなないと思っている、ボロボロのフェンスが放置されていたり。etc・・・
不動産購入時や売却時に、トラブル防止の観点からも土地家屋調査士による境界を確定する「確定測量」が必要になる場合があります。
隣地との境界が不明確でご心配な方、不動産の購入や売却にあたって境界が心配な方、一度、不動産会社に相談してみてはいかがでしょうか。
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