簡単にはいかない土地国庫帰属制度…どんな土地でも引き取ってもらえると思ったら大間違い!?

先日、相続した土地が、どんな土地かも分からず、どうせ使わないから、処分できないかという相談がありました。

確かに、郊外にあって評価も低く売却してもいくらにもならず、しかも境界や隣地所有者の状況も分からないような土地…

相続する方も大変ですよね。

実は、相続したけど使う予定の無い土地を国に引き取ってもらえる「相続土地国庫帰属制度」が、2023年4月からはじまりました。

でも、これがどんな土地でも簡単に引き取ってくれるわけではないんです。

更に、制度を利用するにはコストもかかるんです。


所有者不明土地が増えている!?


それでは、なぜこのような制度ができたのでしょうか?

不要な相続土地を国に引き取ってもらえるという、新しい制度ができた背景…

それは、全国で増えている「所有者不明土地」の問題があるからなんです。

これまでの「相続登記」は基本的に「任意」で、あくまで相続人の判断に任されていました。

その結果、いろんな問題が起こりました。

「固定資産税」などの税金を払わなくていいように登記をしなかったり。

土地を管理するのが大変だからと登記しないでそのまま放置する、相続未登記の事例が多くなってしまったり。

それでは、相続登記をしないとどうなるのでしょうか?

登記簿上の名義は亡くなった方のままになってしまって、そのまま放置されてまた世代交代が続く。

つまり、法定相続人がまた増えてしまうことになるんですね。

更には相続人自身も相続を受けた土地の存在を忘れてしまって、所有者が決まらないまま放置された土地が増えていく

こんな問題から、「相続土地国庫帰属法」ができたんです。

利用価値の低い相続土地が放置されている…所有者不明の土地が増えている…

一定の条件を満たせば、要らない相続土地の国への引取りを認めることになったんですね。

でも、全国にたくさんいると思われる、そういった土地を相続した人や、今後そのような土地を相続する予定のある相続人…

本当に効果的な制度になるんでしょうか?

利用価値の低い相続土地が放置されている…所有者不明の土地が増えている…

土地なら、なんでもかんでも引き取ってくれるわけじゃない!?


なんだか見出しから、残念な予感がしてきますが。

そうなんです…今のところ帰属制度が使える制度なのかというと…疑問なんです。

まず、「いい土地」しか引き取ってもらえない

「通常の管理や処分をするよりも、多くの費用や労力がかかる土地」でなければ!…国庫帰属を認めます…って(-_-;)

「管理するのにいっぱいお金が掛かる土地はダメですよ…」ってことですね。

では、他にどんな土地がダメかというと…

×他人が利用する予定がある土地

×崖

×隣接所有者によって、通行が妨害されてたり使用収益されている土地

×管理処分するのに、費用や労力がかかり過ぎる土地

それぞれの項目に更に細かな条件があります。

条件をパスして申請が承認されたとしても、なんと、土地の所有者にいろいろとコストがかかるそうなんです。

今のところ帰属制度が使える制度なのかというと…

国庫帰属制度でかかるお金の話


まず、申請時に「審査手数料」がかかります。(※2024年3現在、土地1筆につき14,000円の審査手数料が必要。)

そして、申請が承認されて国庫に帰属させようという段階で、10年分の管理費相当の「負担金」が発生します。

負担金は土地の種類によって変わります。

 ①宅地 ②田・畑 ③森林 ④その他(雑種地・原野等)で計算方法が変わるようですが、原則として20万円~です。

面積によっては数十万かかることも。

「審査も厳しくて、こんなにコストがかかるなら、やっぱり放置するしかないじゃん!」

そう思われるかもしれませんが、ダメなんです、もう逃げられないんです。

この国庫帰属法と同時に、不動産登記にかかる法改正があり、相続登記が完全義務化になったんですね。

相続による取得を知ってから3年以内の登記申請を義務付け、正当な理由なく登記しなかった場合は10万円以下の過料が科されます。

それでも10年間届出がなかったら法定割合で分割したものとみなされて、それぞれの所有者に固定資産税や管理義務が課されます。

法改正前にさかのぼって発生した相続や住所変更も対象になります。

つまり、現時点で相続登記されてない「すべての」土地の登記が義務化されるってことですね。

不動産登記にかかる法改正があり、相続登記が完全義務化に

全国に数えきれないほどある、所有者が分からない土地に対して、罰則がどこまで厳しく追及されるのかは分かりません。

でも、少なくとも相続未登記の状態で放置してしまうと、今までは無かった罰則ができたことは間違いありません。

そして、当然ですが、登記をすれば、管理責任、管理費や固定資産税などのコスト負担が出てくる。

相続した利用価値の低い土地を、負担金を払って帰属申請するか、相続登記して固定資産税払って何かに利用するのか…

今後、検討する必要がありますね。

帰属制度を利用するにしてもしないにしても、あらかじめ相続する予定の土地をチェックしておくことが大切です。

急な相続が発生してしまって慌てないように。

所有不動産の確認、他の相続人との話し合い、処分不動産の確認や方法など…

相続の準備ってほんとにいろいろ時間がかかりますから。

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株式会社usuki宅建事務所 代表取締役
1976年生まれ、おとめ座。新潟県新潟市出身。
宅地建物取引士・2級ファイナンシャル・プランニング技能士
古民家鑑定士一級・住宅ローンアドバイザー
不動産キャリアパーソン
新潟明訓高校、東洋大学卒業後、パナソニックホームズ株式会社(旧パナホーム株式会社)に営業職として1999年入社。2021年独立、株式会社usuki宅建事務所設立。
趣味:キャンプ・スノーボード・水草水槽・自転車

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