2世帯住宅を建てるという間違った選択…無駄な広さが招く不都合。

先日、家族が増えて今の賃貸が手狭になってきたので、不動産の購入を検討しているという人がいました。

話を聞いてみると

「新築にしようか、マンションにしようか…建てるなら土地から探さないと…」

「親が持ってる土地はないのかな…」

「そうだ、そもそも一緒に建てればいいじゃん!?

こんな経緯で、実家を建て替えるか、実家の土地を売って別なところで建てるか、とにかく2世帯住宅を考えてるとのことでした。

でも、この2世帯住宅。将来どうするか考えておかないと、実は不都合ばっかりなんです…


2世帯住宅のスタイル


敷地が広ければ、親と子が別棟で建築することも可能です。

お互い気を使いながら生活する必要もないし、そうかといって離れすぎてないので、お互い目が届く距離で安心ですよね。

でも、みんなが別棟で建てられるほど敷地に余裕があるわけではないので、じゃあどうするか?

1階を親世帯、2階を子世帯というようにフロアを分けて生活するんですね。

出典:ダイワハウス「同居・3つのタイプ」

共有同居:キッチンやバスなどを共用して、フロアや部屋を分ける

分離同居:壁で隔てて、全ての空間を分ける

ひとつの建物に2世帯が暮らすスタイルは、大きくは「共有同居」と「分離同居」に分かれます。


2世帯住宅のいろんな不都合…


効率が良さそうな2世帯住宅ですが、実は「不動産」として見た時に、いろんな不都合があるんです…

「親がいなくなったら、その家どうするの?」ここが大きなポイントです。

もちろん、子世帯の子(孫)が利用すれば有効活用できますが、この時代、本人が戻って来てくれるかなんて分かりません。

結婚した相手にもよるし、職場にもよるし、そもそも住環境の嗜好が合わないかもしれません。

①子世帯が親世帯分も利用できる?

そもそも子世帯の部分で足りてるのに、親世帯の分は必要ないほど家はムダに広いわけです。

ましてや「分離同居型」(すまいを完全分離)で作ってしまってたら…

掃除やメンテナンスなどの維持管理2棟分なんて、手間もお金もとても大変、できたもんじゃありません。

②親世帯分を人に貸せる?

親世帯分だけ、使わないから人に貸すというのはどうでしょうか?

そもそも、玄関や水回りを共用にした「共有同居」で作ってしまってたら貸しようがありません。

ムダで過剰な部屋数と設備がある家を、相続した子世帯が持て余すことになるんです。

③親世帯分を売却できる?

売却しようと思っても、そもそも1棟2世帯の同居スタイルで作ってしまったら、自分たちが住んでる限りできません。

親世帯の部分だけ切り離して、別棟として売却するなら可能性はありますが簡単ではありません。

そもそも建てる時に、建物全体を銀行の担保に取られてるので、銀行がOKするかどうか?

また、別棟に切り離したとしても、道路や法規制など、建築基準法に適合した形で土地が分けられるかどうか?

建物の構造的に問題ないのかどうか?

切り離して売ること自体が、そもそもできない可能性が大きいわけです。

④親世帯分を相続した後に問題は無い?

相続する時に、親世帯分の持ち分が、いっしょに建てた子世帯に相続されればいいですが、別の兄弟姉妹に相続されると厄介です…

その建物の所有者に、別で住んでる兄弟の名前が入るわけです。

リフォームするにも、売却するにも、いちいち許可を取らないといけないことになります。

⑤最終的に建物全体を貸せる?売れる?

それでは、建物1棟全体を貸すか売るかしたいとなったら、どうなのか?

残念ながら、そもそも2世帯住宅に絞って、賃貸や中古住宅を探してる人はほとんどいません。

ぼくも仕事で

「2世帯住宅の家の建て替えのために、2世帯で住める仮住まいを探して欲しい」

と依頼されたことがありますが、そんなケースくらいでしょう。

じゃあ、夫婦子供2人の単世帯が、部屋数と水回りが余計にある物件を買うか?…買わないですよね。

親がいなくなったら、その家どうするの?

まとめ

それでは、こうした不都合が将来起こらないように建てるにはどうしたらいいのか?

個人的には2拓です。

・玄関、水回り等はすべて共用。とにかく個室を分ける。(融合同居のスタイル)

・親世帯と子世帯、別棟で建てる。

まだ、融合同居のスタイルで部屋数を取る間取りなら、将来の賃貸や売却を考えた時に可能性があります。

子供の数が多い家族や、ご両親を招く予定の家族、最近流行りのシェアハウスだったり。

いずれにしても、2世帯住宅は、自分たち家族みんなで使う以外、不動産の価値としては低い。

貸したり、売ったりしにくくなるんです。

土地を買う必要がないから…自分たちの借入額を抑えられるから…簡単に考えるのは、危険です。

持ち分はどうするのか、相続になったらどうするのか、貸したり売ったりすることにならないのか。

もういちど「2世帯住宅という選択」が正しいのか…考えてみましょう。

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株式会社usuki宅建事務所 代表取締役
1976年生まれ、おとめ座。新潟県新潟市出身。
宅地建物取引士・2級ファイナンシャル・プランニング技能士
古民家鑑定士一級・住宅ローンアドバイザー
不動産キャリアパーソン
新潟明訓高校、東洋大学卒業後、パナソニックホームズ株式会社(旧パナホーム株式会社)に営業職として1999年入社。2021年独立、株式会社usuki宅建事務所設立。
趣味:キャンプ・スノーボード・水草水槽・自転車

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